岡山市街から東へクルマを走らせる。右手に巨大なビール工場、その少し先を北へ向かう。訪れたのは、静かな住宅街に佇む平屋の1邸。屋根から覗く薪ストーブの煙突、ウッドデッキ、美しく畝を連ねる畑。「ここは別荘?セカンドハウス?」。端正なシルエットが美しいこの家の主、藤井茂さまと繁子さまがこの物語の主人公だ。
物語の始まりは3年前。繁子さまが突然の病に冒された。3か月間の入退院を繰り返した後、茂さまはある決心をする。「環境を変えよう。思うぞんぶん、好きな畑仕事ができるところに住もう」。「そのためには郊外しかない」、そう考えた茂さまは、子育てを終え、長年住み慣れたわが家を離れ、自分たちのための『終の住処』づくりに向けて行動を開始する。
「土地が見つかって、さて家はどうしようかと…。そんな時、息子の嫁の実家(建材店)の強い勧めで秦社長をご紹介いただきました。さっそく、連絡したら秦社長は、2時間後には駆けつけてくれました(笑)」と茂さま。実はこの話には運命的な後日談がある。「実は備中国分寺の近くに昔から気になる家があったんです。漆喰の平屋。そこを通るたびに自然に目がいく。話してみたら、なんと秦社長が手がけた家だったんです。奇遇というか、奇跡というか、これが運命なんですかね」と笑う茂さま。
家づくりに関してはお2人のイメージは明快だった。無垢の木、漆喰の壁、そして薪ストーブ。槍沢や八甲田山の登山経験もある山好きなお2人らしい仕様。住み始めて半年、率直な感想は…「私、冷え性なんです。でも薪ストーブは火を消しても朝まで気温が下がらない。朝も肌着1枚で過ごせるほど。家が湯たんぽを抱えているような感じです」と繁子さま。いっぽう、茂さまは、「見えないところが凄いですね。2階でドタバタしても下まで聞こえない。薪ストーブの基礎も壁も徹底した造り、塀の基礎も松の杭を打って、その上のブロックにも鉄筋が2本も入っている。正直、『そこまでやるのか』と。秦建設の家は実際住んでよさがわかる家。住んでみてつくづく実感しています」。
お2人が精魂込めて耕す自慢の畑。一見普通の畑に見えるが地中には幅60センチ、深さ3メートル、長さ20メートルの暗渠(あんきょ)が南北に伸びている。もともとは地盤を固めるためのものだが、そこに溜まった水を井戸から汲み上げ、畑用、生垣用として利用している。土の養分を含んだ水だけに野菜や植物の育成には最適。こうした工事はマンション建築のノウハウに富んだ秦建設ならではの工夫、お2人も大変満足されている。
茂さまは64歳の今も職場のある広島まで新幹線通勤。週末は25年間続けているスポーツ少年団(ソフトボールチーム)の指導員。繁子さまは畑仕事に勤しむ毎日。薪ストーブの灰は畑の肥料に、天から降った雨は井戸水に。それはまるで親から子へ、子から孫への摂理のごとく転生する。お2人の悠々たる人生はこれからだ。
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