ひとつの家族の40年
昭和40年代のお話です。岸本家は古い家柄ですが、跡取り息子がおりません。一人娘が、美しく成長して、神戸の大学へ行くことになりました。母娘が入学式に向かう汽車の中で、となりの座席の大学生が話しかけてきました。気さくなその学生は郷里の九州から東京の大学へ戻るところで、竹下と名乗り、名刺とガムを母娘に渡しました。それが縁で、二人は結婚することになります。その時両親は二人に約束事を課しました。最初に生まれた男の子を岸本家の養子にすること。まもなく竹下家は二人の男の子に恵まれました。岸本家の父親が他界し。以来30年、岸本家を守ってきた母親も3年前に亡くなり、東京で定年を迎えた竹下夫妻は、岡山に戻って第二の人生を送り始めたばかりです。岸本家の当主となった長男には二人の女の子が生まれました。この日は可愛い孫のため、新築の家で、岸本家に伝わる古いお雛さまを飾って「雛の宴」が開かれました。これが40年に渡る、ひとつの家族のハッピーなお話です。
書院や棚や玄関に生まれた家が活きている
以上のような経緯があって、いま、津倉の「岸本・竹下家」のお座敷には代々のお雛さまが並び、茶席も用意されています。和風の家ならではの設えです。「自転車で通りがかりに気になる家があって、こんな家がいいなと思っていたら、秦建設さんの仕事だと聞いて、すぐに連絡しました。まだ、母が生きていた頃で、母はずっと、秦社長のファンでしたよ。今回完成した庭や門扉を見せてやれなくて残念でしたけど、この家に5年住んでバリアフリーの安心な暮らしを楽しんでいました」と奥様の思い出は尽きません。
新しい家には、床の間や玄関に古い家の部材が活かされています。それを見ると、「ああ、おじいちゃんがここでこうしていたな、なんて思い出しますよ」と、奥様も長男の博之さんもおっしゃいます。長年を経て、自分の生まれ育った地に戻られた奥様には、安堵に似た喜びが大きいようです。
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