雄大な九州の大地を美しく駆け抜ける寝台列車が空前の人気を呼んでいる。その名は「ななつ星 in 九州」。半年ごとに行なわれる予約受付の平均倍率は24倍、最高倍率は185倍、リピーター率は18パーセントという愛されぶり。今回はその「ななつ星」の生みの親、JR九州の唐池恒二会長の「気」に迫った。
穏やかな冬のある日、秦建設セミナーの講演者として来岡した唐池会長。唐池会長のキャリアをさっと振り返ると…由布院の観光列車「ゆふいんの森」プロジェクトを経て、船舶事業部で高速船ビートルの立ち上げにかかわり、その4年後に配属された外食事業部では「JR九州のお荷物」とまで揶揄されていた当事業部を3年で黒字化。2009年にJR九州の社長、2014年会長に就任した。
外食事業部で文字どおり奮闘していた頃を振り返り、唐池会長はこう語る。
「手間をかけ誠実に徹した仕事や商品は、お客さまを感動させるんです。考え抜き、悩み抜き、手間をかける。ただお客さまの感動につながらない手間は、単なる自己満足に過ぎません。お客さまを喜ばせるんだという心持ちがそこには必要です」。
「ななつ星 in 九州」誕生までのエピソードは幾多あるが、なかでも唐池会長が最も心震えた瞬間と振り返る14代酒井田柿右衛門氏との邂逅を紹介したい。古くから有田焼は、ヨーロッパの王室や貴族から高い評価を受けてきた。その頂点にある柿右衛門家当代に、列車を彩る調度品を作ってもらおう。その思いを抱き、唐池会長自らが直談判。14代は「わかりました。やりましょう。これは私がやらなければいけない仕事です」。「やきものは飾るだけではだめです。使われてこそやきものが生きてくるのです」。そして8か月後、14の客室にひとつの予備を含めた計15個の洗面鉢が納品された。その1週間後に、14代は逝去。「ななつ星」は有田焼の最高峰の遺作を受け継ぐことになる。
秦社長は言う。「唐池会長の著書のなかに『夢みる力が気をつくる、気を集め感動を生み出す』という言葉があります。思うに、『ななつ星』にはかつてのSLが醸していた力強い『気』が漂っています。九州の大地を雄々しく、もくもくと煙を吹き出しながら進む姿。クルーの方々の厚いおもてなしの心、料理や調度品にも多くの名人や職人たちの『気』が宿っている。その『気』に人々は感動し、涙する。畑こそ違いますが、マンションも入居者や地域を思うオーナーさまの心が増せば増すほど、『気』は高まっていく。私はそう思っています」。
後日、博多駅にて。「JR九州さまは喜びの舞台を創る」。博多を旅立つ「ななつ星」を列車の影がかすむまで見送った後、秦社長はそうつぶやいた。人をもてなし、人を喜びの極みへと導く極意。そこにこそ「気」は宿っている。
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